足を使ってまちを知れば、暮らしの輪郭がみえてくる
- あかしゆか

- 11月10日
- 読了時間: 5分
12月・1月に開催される、ITONAMIによる倉敷移住体験ツアー。今回は、ITONAMIとも濃い付き合いがあるあかしゆかさんに、2拠点生活や移住をするうえでの”まちを知ること”について、コラムを寄稿していただきました。
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岡山と東京での2拠点生活をはじめて、はや5年半が経った。
いろんな場所でこれまでも書いてきたことだけれど、2拠点生活をはじめたばかりの頃と今とでは、私の生活スタイルはまったく異なっている。
住む場所も、交友関係も。何よりお店も2店舗に増えた。これらの変化は私にとってどれも喜ばしいことで、どんどん岡山という土地を好きになっている。今日は、その中でも「交友関係」に焦点を当てて振り返ってみたいと思う。

2拠点生活をはじめたばかりの頃、コロナ禍だったこともあり、私は岡山との縁をくれたデニム兄弟が営む宿泊施設「DENIM HOSTEL float」の空き部屋に居候させてもらっていた。
「本屋をはじめる、そのために2拠点生活をする!」と口火を切ったはいいものの、まだ本当にこのまちを愛し切れるのか、本当にそんな生活スタイルを続けられるのか、自分の意志に自信が持てなかったからである。
最初はできるだけ、身軽なほうがいいと思った。車も持たないし、家も借りない。何かがあった時にすぐにピボットができるように、最低限の生活からスタートすることは、人生を軽やかに動きたいと思っていた当時の私にとって、2拠点生活をはじめる上でのひとつの絶対条件でもあった。
だからその時は、岡山での交友関係も軽やかで、ほとんどの毎日をデニム兄弟やfloatのスタッフさんたちと過ごしていた。昼ごはんも夜ごはんも、遊びに行くのもどこに行くのも彼らと一緒だった。今思えば、ほとんど家族同然のような付き合い方だったと思う。それほどまでに、最初の1年ほどの思い出は、デニム兄弟とのものが多くを占めている。
けれども次第にコロナが収束し、floatが人気宿になっていくなかで、これまでと同じようにとはいかなくなっていった。私の本屋も無事にオープンして、私自身が児島というまちと、きっと長い付き合いができるという確信を得たことも大きかったと思う。車を買って、アパートの部屋を借りて、次第にデニム兄弟ともこれまでほどには一緒に過ごすことがなくなっていった。2拠点生活をはじめて2年が過ぎた頃だろうか。私はあらためて、ひとりでこの土地と関係性を築きはじめるようになったのである。


あらためて「ひとり」になってみると、今まで見えてこなかった、まちのさまざまな営みが見えてくるようになった。児島だけではなく、倉敷の美観地区や岡山駅付近にも、よく遊びに行くようになった。飲食店でひとり飲み歩くようになったり、お店に来てくださった、児島や宇野、直島などで事業を営んでいる方々の場所に遊びに行かせていただいたり、なかなか行く機会がなかった美術館や民藝館に行ってみたり。
まちには、私が思っている以上に、さまざまな営みや暮らしがあるのだと知った。それまでは、自分の直接的な興味や関心の輪の中だけで生活をしていたけれど、偶然とご縁に身を任せ、人と出会っていく中で、まちの歴史や文化、そこに息づくリアルな生活を垣間見ることができた。そうすると、まちが立体的に立ち上がる。好きな人の過去や知らなかった部分を知って、ときめきが愛に変わっていくように、より複合的にまちを見ることができるようになったのだ。


そして私がそうやって、まちの人と軽やかに交流を深めていくことができたのは、今思うとデニム兄弟と密に過ごした数年間で、彼らが岡山のおもしろい人たちとたくさん会わせてくれたからなのだと思っている。
というよりも、私が今通っている飲食店も、懇意にしている人たちも、もとを辿ればデニム兄弟が紹介してくれた人が多い。その時は「デニム兄弟の連れ」として軽く会釈してお話する程度だったとしても、そこから時間を経て、「あかしゆか」という主語を携えながら出会い直してとっても仲良くなった人もいた。どこかで一度会っているという事実は、急に初対面で会うよりも、壁をひとつ取ってくれることがある。

「こんな素敵な人がいるんだよ」と紹介をしてもらう。その時は縁が深くならなかったとしても、いずれタイミングが来たときに、仲良くなれる可能性は大いにある。もちろん、軽い紹介が、人生を変えるような出会いになることだってたくさんある。
大切なのは、信頼している人に、いろんな場所を案内してもらうことだ。自分の足を使って、人と会い、たくさんの景色を見ることだ。まずは軽くでもいい。興味を持とうとすることからすべてははじまるのだと思う。私はデニム兄弟に岡山のいろんな場所に連れ回してもらったことが、今の楽しい岡山生活につながっていると断言できる。
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さて、そんなデニム兄弟が主催する倉敷市の移住ツアーが、12月と1月に開催されるらしい。12月は繊維を中心としたものづくりを、1月は食文化をテーマに、さまざまな場所にデニム兄弟が直接連れていってくれて、なんと1泊2日・食事と宿泊費込みで5000円なのだという。
岡山──倉敷・児島のエリアに少しでも興味がある人は、ぜひぜひ参加してみてほしいです。私も1月の開催日に、懇親会で参加させていただきます。
ぜひ岡山でお会いできることを、楽しみにしています!
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<倉敷移住体験ツアー詳細はこちら>
繊維のまち・倉敷。
地場産業を体感するものづくり満喫ツアー
12/6(土)〜12/7(日) 1泊2日
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倉敷らしさを知る、
食文化の歴史と今に触れるツアー
1/17(土)〜1/18(日) 1泊2日





